問題・補足→半々の確率でコインが増減する箱
箱にコインが1枚もない状態から、以下のことを繰り返す。
「コインを受け取り、それを投げる。それが表なら箱に入れる。それが裏なら、箱からコインを1枚取り除き(箱にコインが入っていない場合は何もしない)、投げたコインも捨てる。」
これを箱のコインがN枚になるまで繰り返すとき、コインを投げる回数の期待値は何回か。
anを「すでに箱にコインがn枚入っているときに、あと何回コインを投げれば箱のコインがN枚になるかの期待値」とおく。このとき、a0が求める答えである。
このとき、以下の関係が成り立つ。
a0 = a0/2 + a1/2 + 1
(箱にコインが入ってない状態でコインを投げた結果は、箱にコインが入ってないか1枚入っているかのどちらかで、それが半々の確率で起きる。よって残るコインを投げる回数の期待値は、1にこの2通りにおける回数の期待値を足したものである。)
同様に、
an = an-1/2 + an+1/2 + 1 (1 ≦ n ≦ N-1)
aN = 0
が成り立つ。これらから
:
となる。一次方程式を解く行列で書けば、
[ 1 -1 0 0 0 0 0 0 ] [a<1> ] [ 2 ] [-1 2 -1 0 0 0 0 0 ] [a<2> ] [ 2 ] [ 0 -1 2 -1 0 0 0 0 ] [a<3> ] [ 2 ] [ 0 0 -1 2 0 0 0 0 ] [a<4> ] [ 2 ] [ … ] : = : [ 0 0 0 0 2 -1 0 0 ] [a<N-4>] [ 2 ] [ 0 0 0 0 -1 2 -1 0 ] [a<N-3>] [ 2 ] [ 0 0 0 0 0 -1 2 -1 ] [a<N-2>] [ 2 ] [ 0 0 0 0 0 0 -1 2 ] [a<N-1>] [ 2 ]
のようになる。(一番左上だけ「2」ではなく「1」であることに注意)
これを例えばN=5で解いてみると、
1 -1 0 0 0 | 2 0 1 -1 0 0 | 4 ←2が加えられる 0 -1 2 -1 0 | 2 0 0 -1 2 -1 | 2 0 0 0 -1 2 | 2
1 0 -1 0 0 | 6 ←4が加えられる 0 1 -1 0 0 | 4 0 0 1 -1 0 | 6 ←4が加えられる 0 0 -1 2 -1 | 2 0 0 0 -1 2 | 2
1 0 0 -1 0 | 12 ←6が加えられる 0 1 0 -1 0 | 10 ←6が加えられる 0 0 1 -1 0 | 6 0 0 0 1 -1 | 8 ←6が加えられる 0 0 0 -1 2 | 2
1 0 0 0 -1 | 20 ←8が加えられる 0 1 0 0 -1 | 18 ←8が加えられる 0 0 1 0 -1 | 14 ←8が加えられる 0 0 0 1 -1 | 8 0 0 0 0 1 | 10 ←8が加えられる
1 0 0 0 0 | 30 ←10が加えられる 0 1 0 0 0 | 28 ←10が加えられる 0 0 1 0 0 | 24 ←10が加えられる 0 0 0 1 0 | 18 ←10が加えられる 0 0 0 0 1 | 10
のようになる。このうちa0の値は一番上の値なので、30回が期待値となる。
一般に、同様の計算により、回数の期待値は a0 = 2 + 4 + … + 2N = N(N+1) となる。